機動戦士ガンダム
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第4回 どうまとめた? 劇場版『機動戦士ガンダム I』(その1)

 劇場版1作目、映像上のメインタイトルには実は『 I 』の表記はない。これは1作目には数字表記をしないのが映画界の慣習だからである。ここでは便宜上、商品上での名前にしたがって『ガンダム I』と表記していこう。
 『ガンダム I』は、TVシリーズの第1話「ガンダム大地に立つ!」から第14話「時間よ、とまれ」(ワッパでガンダムを破壊するエピソード)にあたる映像を素材として使用している。
 ストーリー的には、アムロによるガンダムの初起動から始まり、そしてホワイトベースに乗って幾多もの苦難の旅を経て、「ジーク・ジオンの声が聞こえる」という部分で終わる。アムロが個人的な動機から戦いを始め、視点が次第に拡がって相手が「国家」という大きなものであることを見せて締めくくっているわけだ。
 これは、『機動戦士ガンダム』という物語がビルドゥングス・ロマン(成長のための教養小説)の基本的な構造をもっていることから、必然的に導き出された構成と言える。つまり、個として日々をおくっていた少年期を終え、やがて人間として乳離れをはたしていくアムロが、社会的なものを認知し始めるまでの物語となっている。
 構成上は、TVシリーズからいくつかのエピソードを割愛し、エッセンスを束ね、一部の順序を入れ替えて「アムロの成長」に的を絞っている。
 以下、TVシリーズとの大きな差異点について、順次述べていこう。

(1)アバンタイトル
 主題歌はなく、アバンタイトル(題名の前に流れるシーン)から本編がスタートする。最初にスペースコロニーの全景がインサートされ、ナレーションによる設定の説明が加えられた。これはTVシリーズ時の第1話冒頭が、何を意味しているか伝わりづらいという意見を受けてのものだ。コロニー落下の瞬間にカットが付け加えられ、都市の全滅から宇宙空間に出て「機動戦士ガンダム」のメインタイトルが入るという構成をとっている。

(2)イントロはTVとほぼ同じ
 第1話の本編、第2話についてはカット内容の補強や差し替えがある程度で、ほとんどそのまま全体が入っている。特に大きく変わっているのは、デニム曹長のザクを仕留めるシーン。ビーム・サーベルをザクに差し込んだまま地上へ倒れこむカットが追加になっている。
 このようにTVアニメの予算的制約でカットの段取りを飛ばした部分がある。他にも第2話でビーム・ライフルを撃つガンダムでコロニー全景まで引いたカットを入れたり、引きセルやPANの速度を遅くするなど、映画館でかかることを前提に修正されたカットも多い。

(3)ルナツー描写の割愛
 サイド7を脱出後は、すぐルナツーに到着してしまう。第4話で描かれたワッケイン司令の頑迷さ、ガンダムの封印、パオロ艦長の死などは割愛され、補給を受けてすぐさま地球へ送り出すシークエンスとなる。ジオン軍側も第3話からパプア補給艦による物資確保シーンを使い、大気圏突入への準備を静かな緊張をもって描いている。
 これは戦闘また戦闘になると観客が疲労するため、流れ的にはワンクッションおいてプレッシャーを解放するニュアンスで構成されたものである。

(4)大気圏突入に戦いを集約
 第5話の大気圏突入シークエンスに、第3話の「ガンダム対シャア専用ザク」の戦闘シーンを入れこみ、アクションの印象を補強している。ガデム艦長の旧式ザク(第3話)は割愛され、ガンダム・ハンマー(第5話)は鉄球のトゲが四散してダメージを与えるカットとして新作画されたが、欠番となった。
 大気圏突入時に発生する空力加熱を遮断する手段は、TVシリーズでは耐熱フィルムであったが、劇場版では新作画による「耐熱フィールド」となった。これはガンダムシールドを前面に押したて、盾の内壁に冷却エアを噴射して温度を下げるというもの。

(5)北米での地上戦を統合
 大気圏突入直後に第6話ラスト「アムロの疲弊シーン」を入れている。これを後のブライトとの衝突の原因に置き換えているのだ。
 敵のリーダーはシャアからガルマに移行するが、戦車マゼラ・アタックによる地上部隊、戦闘機ドップによる飛行部隊と空陸両面からのホワイトベース襲撃作戦は主に第6話、第ガルマ自らが出撃するシーンは第9話と複雑に合体させている。戦闘的な見せ場でもあるため、ドップによる木馬攻撃やマゼラ・アタックの砲撃などここでは新作を大幅に追加。さらにカイの乗ったガンキャノンの初陣は第7話をベースにしながら新作するなど、複雑に組み合わせて地上戦に厚みをつけている。

 
(文中:一部敬称略)



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